大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(う)942号 判決

所論のうち、本件適用法規である公選法の戸別訪問禁止規定の憲法適否について検討するに、およそいかなる憲法上の権利・自由ももとより絶対無制限ではなく、憲法一二条、一三条にいう公共の福祉による制約に服することは明らかであり、ことに選挙運動については、それが多数の候補者・政党によつて一定期間内に同時に行われることを考えると、公選法一条の規定するように、「選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明かつ適正に行われることを確保」するために必要な内在的制約を含んでいると解されるから、選挙の公明適正を確保するため選挙人の自由を損うおそれのある手段・方法による選挙運動については立法により必要かつ合理的な制限を加えることができるのはいうまでもない。ところで戸別訪問の禁止は、意見表明そのものの制約を目的とするものではなく、意見表明の手段方法のもたらす弊害、すなわち、戸別訪問が買収・利害誘導等の温床になり易く、選挙人の生活の平穏を害するほか、これが放任されれば、候補者側も訪問回数等を競う煩に耐えられなくなるうえに多額の出費を余儀なくされ、投票も情実に支配され易くなるなどの弊害を防止し、もつて選挙の自由と公正を確保することを目的としているところ、右目的は正当であり、それらの弊害を総体としてみるときには、戸別訪問を一律に禁止することと禁止目的との間に合理的な関連性があるということができ、そして戸別訪問の禁止によつて失われる利益は、それにより戸別訪問という手段方法による意見表明の自由が制約されることではあるが、それは、もとより戸別訪問以外の手段方法による意見表明の自由を制約するものではなく、単に手段方法の禁止に伴う限度での間接的・付属的な制約にすぎない反面、禁止により得られる利益は、戸別訪問という手段方法のもたらす弊害を防止することによる選挙の自由と公正の確保であるから、得られる利益は失われる利益に比しはるかに大きいということができ、以上によれば、戸別訪問を一律に禁止している公選法一三八条一項(罰則二三九条三号)の規定は、合理的で必要やむをえない限度を超えるものとは認められず、憲法二一条に違反するものではなく、したがつて、戸別訪問を一律に禁止するかどうかは、専ら選挙の自由と公正を確保する見地からする立法政策の問題であつて、国会がその裁量の範囲内で決定した政策は尊重されなければならないのである。

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